アフリカン・ライブ
地元の“JAY'S”という小さなバーで、
アフリカン・ミュージシャン達(主にコンゴやタンザニアの)による
チャリティー・コンサートが開かれています。
何のチャリティーかというと、もちろん
東北、日本の復興を応援するチャリティーです。
小さなバーなので数えるほどのお客しか入りませんが、
彼らは100%、あるいはそれ以上のパフォーマンスで
演奏をしてくれています。
“
AFRICA HERITAGE
”という、アフリカと日本の
文化交流、青年育成、就業活動等を推進している団体が
主催をしているようです。
今夜はその第2回目でした。
第1回目は「初代ライオン・キングのパーカッショニスト」
MUKUNAというコンゴ出身のミュージシャンを中心とするトリオでした。
「アフリカは国じゃなくて大きな大陸なんだ」
というように、他の二人はタンザニアとモザンビーク(?)
かどこか他の国の人のようでした。
或る程度日本語を分かっているようで、
在日、あるいは日本に縁の深いミュージシャン達なのでしょう。
「カタコリ」は「気をつけろ」という意味、
「3522(サンゴニニ)」は「お元気ですか」、
「35手(サンゴテ)」は「元気です」だと教えてくれました。
太鼓を叩きながら歌うのだけれど、とても温かい音楽でした。
今夜は「元スティービー・ワンダーのサキソフォン奏者」
とかいうTABUという男のトリオ。
ポスターの写真を見ると強面なのですが、
実際は小柄で笑顔満点の男でした。
で、このトリオは正しく「バンド」で、
TABUのサックスはソニー・ロリンズを彷彿とするような超一流ながら、
全員がパーカッションを叩き、全員が歌います。
ギター奏者がいて、多分ギブソンのチェット・アトキンス・モデル
のようなエレガット(クラシック・ギターのエレキ版)
を弾くのだけれど、このサウンドが微妙に歪んでおり、
何かアフリカの弦楽器を思わせるような音を奏でます。
ソロは弾かず専ら伴奏ながら、
複音が出せる唯一のメロディー楽器ですから、
圧倒的に楽曲を構成するようなリズミカルなギターです。
専らパーカッションを担当する奏者は、
掛け声から踊りまで素晴らしく、
或る意味彼がメインパフォーマーを演じます。
そしてTABU氏を紹介するときは、
「ハイ、ブタノ反対、タブー!」
などと洒落て皆を笑わせています。
演奏は本格的で、アフリカ音楽のエッセンス満載でした。
途中、「ブルースの原型」(太鼓だけで?!)、
「ルンバの原型」(めちゃめちゃアフリカ音楽)、
「ジャズの原型」(こりゃロックだよ、ロック!)を披露。
来場者の誕生日を音楽で祝ったり、
アフリカン・ダンス・パーティー状態になったり、
アンコールの末、最後の最後は、
サックス1本で「上を向いて歩こう」、
これにはしびれました。
一音一音の細やかさ、大胆さ、集中力がもの凄かった。
この六八九(永六輔、中村八大、坂本九)の名曲は、
サビの一回り目はサブ・ドミナント(明るい感じ)、
二回り目はサブ・ドミナント・マイナー(微妙に暗い感じ)
というトーナリティーの妙からなっていることを皆さんご存知でしょう。
すなわち、「ラ」の音が二回り目は半音下がるのです。
ところが、TABU氏は、下げなかった。
TABU氏ほどの一流ミュージシャンが、
そのトーナリティーの妙を理解していないわけがありません。
僕には、一瞬彼が躊躇し、
結局は敢えて明るいままで通したのが見えた気がしました。
アフリカ音楽は、総じて明るいです。
一見、野性的なリズムの激しい音楽を想像しますが、
「マライカ」(「天使」の意味)という
優しい優しい楽曲も演奏されました。
「C調」と思われるくらい曇りのない曲も多いです。
それが、心底、明るく、優しく演奏されます。
逆に、「ブルースの原型」をやる前のMCでは、
くどいくらい言い訳めいたことを言ってました。
「悲しいことも人生では役に立つから」等々。
なぜなのでしょう。
コンゴの社会的背景はどうであったのか、
アフリカの多くの国々がどのような歴史を歩んできたのか、
そういうことを知り、想像してみることは意味があるのかもしれません。
ホラー映画まがいの音楽や、俺が俺がの演奏会は、
平和ボケした地域でしか受け容れられないのかもしれません。