呪われた日

 会社の食堂の横に売店があります。 夕食の後、なにげに立ち寄り、いつもと同様に煙草とスタミナドリンクを取ってレジに並んでいると、森永の「*たべごろショコラ*クランベリー」という菓子が目に付きました。 普段は菓子なぞ買ったことがないのに、あんまりパッケージが綺麗だったので、ふと手に取って衝動買いしてしまいました。 魔が差したというやつでしょうか。 オフィスに戻って、どんな味かいなと包装を解きながら気が付きました。

「げっ、今日はバレンタインデー!」

 何が悲しくて自分でチョコなぞ買ってしまったのだろう。 そもそも子供の頃からバレンタインデーなんて大っ嫌いでした。 女性が男性にチョコレートを贈るなんぞは、日本だけの奇異な風習と聞いています。 ホワイトデーもお菓子屋さんの発案と聞きますし、最近ではお寿司屋さん業界苦肉の「節分には太巻き」なぞという風習まであるそうです。
 それにも増して、何事もなくその歳の一日を見送った青少年の悔しさ、寂しさ、帰宅して母親から戴くトドメのチョコの苦渋を知ってか知らでか、この悪しき風習は全くもって衰えを知りません。この旧来の宿敵、仇とも言うべき忌まわしき日に、不覚にも自分でチョコを買ってしまうとは、、、。 自己嫌悪に苛まれながら、先日時効となったグリコ森永事件の犯罪心理の裏には、こういった思いがあったのではないかという穿った見方をしてしまう今宵ひとときでありました。


--- 14.Feb.2000 Naoki

back index next