絵:たくや君(埼玉県・8才)
作:デルピエ〜ロ橋本

第4話 おちた王さま

「きょうは、ついてない日だな。
カブトムシには なげとばされて、
おまけに ケムシに笑われた。」

ノコギリクワガタが よわっていると、
ゆっくり のんびり だれかがそばに やってきました。
「きーみーはーだーれー?」
見ると、1ぴきのカタツムリでした。
「オ、オレサマは、森の王さまノコギリクワガタだ。」
「おーうーさーまーかー・・・」
「そうだ。ちょうどいいところに来た。
ちょっとせなかを かしてくれ。」
ゆっくり のんびり カタツムリは、
せなかを むけてやりました。
「おい、はやくしろ。まったく のろまな やつだなぁ!」
「ごーめーんーよー・・・」
それでもノコギリクワガタは、
カタツムリの せに つかまって、
どうにかこうにか おきあがることができました。
「・・・ありがとう。」
ノコギリクワガタは、うまれてはじめて、
おれいを言うことが できました。
「どーうーいーたーしーまーしーてー・・・」
ゆっくり のんびり カタツムリは、行ってしまいました。

ノコギリクワガタは、かんがえました。
「このまま 森のレストランにもどっても、
まだあの いまいましいカブトムシのやつがいるはずだ。」
しかたなく、ほかにも ミツの出ている木はないか、
歩いてさがすことにしました。

草のあいだを歩くのは、
大きなツノが じゃまになる。
それでもノコギリクワガタは、
いっしょうけんめい 歩きました。
だんだん夜空が 白くなり、
やがて朝日がのぼりだす。
それでもノコギリクワガタは、
いっしょうけんめい 歩きました。

草のあいだを歩くのは、
大きなツノが じゃまになる。
そこで ノコギリクワガタは、
たおれた木の上を 歩くことにしました。

けれど、しばらく進んでいくうちに、
それ以上 つかまるところが なくなってしまいました。
それは、たおれた木の えだの先までやって来たからです。
「まいったな、これからどうしよう。」
ノコギリクワガタは、かんがえました。

「そうだ、わすれていたことがある!」
ノコギリクワガタは、だいじなことを 思い出しました。
「たしか せなかに とぶための はねが しまってあったんだ!」
ノコギリクワガタは、えだのさきに立ち、
せなかの かたい 前ばねを パッとひらいてみせました。
そして、パラフィン紙のような 後ろばねを ひろげました。
ブ、ブ、ブ、ブ、ブーーーン!
すばやく はねをうごかすと、重いノコギリクワガタの
からだが、フワッと ちゅうに うきました。
「とべた! とべた! ひさしぶりだなぁ!」

つづく



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