絵:たくや君(埼玉県・8才) 作:デルピエ〜ロ橋本 |
第5話 空とぶ王さま
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「だれだ! あぶないじゃないか!」
「ボクは、ギンヤンマだよ。そっちこそだれだ?」
「オレサマは、森の王さま ノコギリクワガタだ。」
「王さまだって? ハッ、ハッ、ハッ!
そんな のろまな王さまが あるものか。」
「なんだと! このオレサマをバカにするやつは、
この大きなツノでちょんぎるぞ!」
「やれるものなら やってみな。
そのスピードじゃ おいつけまい。」
からだをキラキラ光らせて、
ほれぼれするほどスイスイと
ギンヤンマは、あたりをとんでみせました。
「きょうは、ついてない日だな。
カブトムシには なげとばされて、
おまけに ケムシに笑われて、
ギンヤンマにも バカにされた。」
どうにもこうにも しかたなく
そのまま とびつづけていると
こんどは かわいい 虫とすれちがいました。
レモンのように 黄色いはねを
花びらみたいに はためかせ
ハタハタハタハタ とんでいます。
「きみは、だれ?」
「ワタシは、モンキチョウよ。あなたは?」
「オレサマ、いや、
ボクは森の王さま、ノコギリクワガタさ。」
「まぁ、王さまでいらしたの。
どうして こんなところを とんでいるの?」
「ちょっと、森がきゅうくつだったからさ。
きみは、なにをしているの?」
「ワタシは、こうして花から花へ、
ミツをもらいに とんでいるのよ。」
「花からミツが もらえるの?」
「あら、あなた王さまでしょう?
そんなことも知らないの?」
ノコギリクワガタは、かんがえました。
知らないというのは、はずかしい。
「いやいや、とうぜん知っているとも。」
「これは 王さま、とんだ しつれいを。」
モンキチョウは、えがおで わかれをつげました。
「それじゃワタシは、あそこの花へ。さようなら。」
「それじゃあボクは、こっちの花へ。さようなら。」
そこで ノコギリクワガタは、
ピンクの きれいな アザミの花に
おりて はねを しまいました。
「ミツだって? ほんとうか?」
なにしろ、とてもおなかがすいて、
もう フラフラの じょうたいです。
はらぺこの ノコギリクワガタは、
2ほんの しょっかくを うごかして、
ミツをさがしあてようとしました。
けれど、からだが重すぎて、
アザミがどんどんかたむいて、
足をすべらせ まっさかさまに、
じめんに おちてしまいました。
おちただけならまだいいが、
そのまま あおむけになってしまいました。
「きょうは、ついてない日だな。
カブトムシには なげとばされて、
おまけに ケムシに笑われて、
ギンヤンマにも バカにされ、
ついでに花から おっこちた。」
ノコギリクワガタは、おきあがらずに、
しばらく空をながめていました。
「青い空、白い雲、やっぱり夏は、すてきだな。」
そのとき空をよこぎって、
さっきのギンヤンマがとんできました。
「たいへんだ! たいへんだ!」
「いったいぜんたい どうしたんだ?」
「モンキチョウさんが、モンキチョウさんが、
ジョロウグモに つかまった!」
つづく |
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