最近トリオを組みました。
ベース、ドラム、そしてギター兼ボーカルです。
ベースの人は、以前はベース教室などでも稼いでいたようですが、今はOLをやりながら音楽を続けています。
バンドを4つも掛け持ちしている計算になり、毎週ライブが入っていて、月に一度は地方への遠征もあるようです。
更に、週に一度は別のドラムと「二人個人練習」のスタジオを入れているようで、遂に体調を崩し、今は禁酒宣言しているようですが、とにかく真面目で頑張り屋の女性です。
最初、このベースの人に「バンドをやりませんか?」と声をかけたところ、断られました。
ただ一つだけ条件を飲んでくれるなら是非やってみたいのだがという注文がつきました。
それは、「橋本さん自身がボーカルをとるのなら」というものでした。
彼女は、僕が事前に渡していた Forest Song 弾き語りのボーカルを気に入っていたのです。
僕は、ボーカルではずいぶん失敗してきました。
ボーカルがいないので楽曲提供者の自分がバンドで歌っていたことがあるのですが、聞いた人はみんな困っていたし、メンバーからは頼むから辞めてくれと懇願されていたし、自分でも歌うのは好きじゃなかった。
だから、いろんな方面からボーカルを募集して活動してきました。
それが、バンドがなくなってしばらくしたら再び無性に歌いたくなり、Forest Song 弾き語りを試みたというわけです。
むかしのメンバーからは「華がない」などと酷評されてきましたが、それでも気に入ってくれる人が何人か現れるようになりました。
そして今回、極めつけの変わり種が登場したというわけです。
ドラムの人は、大学時代はジャズ研に出入りしていましたが、その後は名だたるアングラバンドを次々と手がけて来た人。
非常に複雑気儘なドラムを演奏するので、必ずしも全てのバンドで歓迎されてきたとは言えませんが、過去に彼とプレイしたとき、暗黙の了解というか、共鳴するものをお互いに感じとっていました。
ここ数年はミュージックシーンから影を潜め、本業の花屋さんをやりながら、蝶や蘭の採集に全国を飛び回るという生活です。
仕事の関係がありますから、宮古島に日帰りなどという強行軍もやってのけたようで、それなりに多忙な毎日を送ってきたようです。
以前彼とバンドをやっていた頃、練習前に蘭を採集してきたことがあります。
山歩きしていたら崖の上に希少種の蘭を見つけたのです。
小雨の降る日で滑りやすくなっていたのでしょう、この蘭を採集しようと崖をよじ登っていたところ、彼は一度転落してしまったようです。
そこで首筋を痛めてしまいましたが、二度目のトライでようやく採集できたと喜んでいました。
ただし、その日は片手でドラムを叩いていました。
彼は、一生懸命働いてきましたから、バブル時代に文字通り高嶺の花であったそういう希少種の蘭を今では「買える」のだそうです。
そこで先日も一つ買って帰り、部屋に置いてみたそうです。
ところが、思ったほどの満足感がない。
そこに蘭があるのに、それがどうしたというわけです。
彼を再び誘うために電話をしたとき、僕は「最近欲しい機材が買えるようになったが全く満足感がない」という話をしました。
彼は、「最近ちょうど同じ事を感じていた」と笑っていました。
我々を満足させるには音楽というプロセスが必要だ、「一丁やろうということか」、「そういうことだな」というのが今回のトリオのきっかけとなりました。
初めて3人でスタジオ・インしたとき、ブルースやブギなんかのセッションになりましたが、先ずこのベースとドラムが一体になり、否応なく自分も乗せられてしまいました。
ベースの人は、ドラムの人との共鳴に驚き、これがとても貴重な出会いであることを喜んでいました。
また、僕との出会いで、自分が変化し始めたことを強調していました。
全く畑違いの3人、各々暮らしている世界も離れているわけですが、こういう時間を共有できるというのは、あらためて素晴らしいことだと思っています。