さてさて、僕は縁あって日比谷に出向くことがあります。
鹿鳴館跡地という由緒ある土地に建てられたビジネスビルの上階に御座するビッグカスタマーを訪れるのです。
この前もその用があり、難産した資料をバッグに入れて、春の日の差す乗客疎らな田園都市線の各駅停車に乗り込みました。
席に座って何をするでもなく、考えるでもなく、かといってウタタネしたい欲求も湧かず、何気に向かいの窓の外なんぞ眺めていると、いきなり人の正面にヌボと立つ輩がいました。
びっくりして見上げると、面妖な出で立ち、よりにもよって赤紫に染めた髪、どこかのフーテン(古い言葉で申し訳ない)が絡んできたかと思ったら、僕を見て満面の笑みを浮かべている。
よく見ると、あれ、スティーブ衛藤だ。
もう10年も会っていないか、会おうとしても会えず、つい先日メールで「お互い縁が無いのだ」と書いてよこしたPUGSのパーカッショニストです。
普段は車を足にしているであろうこの男も、この日は福岡に飛ぶため空港へ向かう途中、偶然といえば大変な偶然でした。
昔なら普段から毒舌の応酬を怠らないこの旧友と、音楽活動の近況、亡くなった先代高橋竹山の話、来日したラヴィ・シャンカールやインド音楽のことなど、次々と話に華が咲いてあっという間に目的の駅に付いてしまいました。
流石に最後は、「お前なんかに会って飛行機大丈夫かな」と捨て台詞。
“Steve! This is your DESTINIEEE...”