森の音楽
空気中の8割は窒素、残る2割は酸素です。
じゃ、オゾンやヘリウムやアルゴンみたいなものはどこに行ったのかというと、ものすごく微量に漂っているらしい。
地球の温室効果で話題になっている二酸化炭素は、火力発電だの工場だの自動車だのによって増えたといっても、なんと大気中の0.03%程度しかありません。
しかし、そのわずかなガス濃度の変化によって、我々の環境は大きく変化してしまいます。
海中や陸上の植物は、光合成によるガス交換で、われわれに酸素を供給してくれます。
二酸化炭素だけでなく、二酸化窒素をはじめとするいくつかの有害ガスを吸収して分解してくれることも分かっています。
そして、大気の絶妙なバランスを保ってくれているのです。
古来植物は、動物が地上に上陸するための環境を整え、動物が受精を促進してくれることへの歓迎の花を付け、動物が種子を運んでくれることへのご褒美としての果実を用意しました。
我々は、植物と共に生き、かつ生かされているのだということを忘れてはなりません。
ルーマニアの7歳くらいの女の子の話を聞いたことがあります。
ルーマニアの田舎では、そんな小さい子でも、羊を追ったりして働いてるんだそうです。
羊が逃げると、おチビのくせに、「どこへ行くの!ママの所にいらっしゃい!」と言って羊を集めるのだそうです。
羊に逃げられてしょんぼりしている女の子に、「大きくなったら何になりたい?」と尋ねると、女の子はこう答えたそうです。
「私は木になりたい。
そうすれば枝に小鳥が集まってくるでしょう。
そうすれば私は毎日その歌声を聞くことができるでしょう。」
森は、酸素を供給し、様々な生命を養い、自分自身も生きています。
そして、我々人間にも、その溢れるような慈愛を分けてくれます。
森は、人を優しく包み込んでくれる不思議な力を持っていますね。
多摩川上水沿いには様々な木が茂っていて、その下には名も知らぬ白やピンクや藤色の花が咲いていたり、可愛い小鳥が餌を探していたりします。
鶯も、各々のテリトリーを守りながら、数匹が鳴いていました。
雨上がりの木々の香りは、体の奥に眠るなにかを呼び覚まします。
森には、心の傷を治癒する精気のようなものがあって、僕には欠かせない憩いの場になっています。
そこには美しい歌や音楽が流れています。
聞こえますか?
参考: ラジオ談話室(NHK第一放送)
--- 26.Apr.1997 Naoki