王冠を脱がない男
6月14日、奇しくも徒夫散人の誕生日、日本初のW杯第一戦が予定されていますね。
あと一週間を切りました。
本来なら熱気が最高潮に高まってくるこの時期に、冷水を浴びせるような出来事でした。
カズ、行けませんでしたね、フランス。
さすがに岡ちゃん批判の声が燻っていますが、しかしそれは日本代表が帰国してから論議しても遅くはないのだから、今は気持ちを代表の22人に向け直さなくてはね。
いや、そのことを書きたかったのではなくて、僕は惚れ直したのですよ、カズに。
代表を外された直後、カズのオフィシャルホームページに彼自身からのメッセージが掲示されていました。
それを読んで、先ず「安心」した。
そして、あの帰国後の記者会見。
あれで惚れ直したのですよ。
ご覧になった方も少なくないと思いますので、ここで彼の発言の内容や態度について再確認はしませんが、ほぼ時を同じくしてブラジル代表を外された同じく背番号11のスーパースター、ロマーリオの涙の記者会見とは対称的な、簡単に言ってしまえば、今までカズは虫が好かなくてファンではなかったという人でさえ好感を持ってしまったというようなものでした。
妬まず、奢らず、憤らず、消沈しない。
それは、いつもお山の大将で、W杯予選で振るわず途中降板させられたときに「俺?俺?」と自らを指差していた、あの子供染みたサッカー選手のイメージを払拭する、大人の男としてのコメントでした。
彼の胸中が穏やかであったはずはありません。
しかし、彼は落ち着いていました。
彼を支えて来た身内や、彼に憧れて来たファンのためにでしょうか。
いや、彼は彼自身を台無しにしないためにも、プライドを手離さなかったに違いありません。
妬まず、奢らず、憤らず、消沈しない。
キング・カズの「キング」たる由縁はそこにこそあるのだと思いました。
「おちつきなさい」、そして「おとこはなかない」。
TVブラウン管の向こうに、例の宿題を手にしている若者をまた一人見つけた気がしました。
--- 8.Jun.1998 Naoki