“ナプスター”というソフトウェアをご存じだろうか。
これは、mp3(ある音声圧縮のフォーマット)のファイルを検索してダウンロードすることのできるソフトウェアです。
着目すべきところは、インターネットに接続されたクライアントパソコン、つまり今あなたがお使いになっているようなパソコンの中にある音楽ファイルを検索してダウンロードすることができる点です。
要は、音楽ファイルを業者のホームページからダウンロードするのではなく、ユーザー同士がお互いに交換できるということになります。
もっと分かりやすく言えば、音楽をタダで流通させることができるのです。
インターネットとパソコンさえあれば、いつでも、誰でも、手軽に楽曲の音声を供給し、自分も手に入れられるということです。
RIAA(アメリカ・レコード業協会)とレコード関係の会社など20社は、「CDショップに入って堂々と店頭のCDを盗むのと変わりない」とばかり、ナプスターに対して著作権侵害の訴訟を起こしました。
けれど、このソフトウェアの配布自体は違法ではないので、検挙には至っていません。
最近では、邦人の音楽ファイルも出回っていますから、日本の音楽業界とて安穏としてはいられないでしょう。
まあ、このソフトウェアの賛否は別として、旧来はサーバー(供給者)とクライアント(依頼者)という関係で成り立っていたネットワークが、サーバー並立型のインターネットとなり、そしてついには家庭のパソコンまでがサーバーでありクライアントでもあるという大並立型に成り得るという技術そのものは、とても興味深く、また夢のある話ではないかと思います。
昨今のインターネットは、広告メディアとしての注目を集め、フリーメールやフリーウェブを供給する業者が林立しています。
つまり、誰でも無料で、何の身分照会もなく、幾つでもメールアドレスを手に入れホームページを持つことができるようになりました。
よって、インターネット上における匿名性は益々高くなり、仮想世界としての性格を益々強めています。
この、いわば無政府状態のネット上では、重要な情報や心温まる活動に出会うこともあれば、猥褻物の陳列、誹謗中傷、麻薬売買やその他の犯罪への利用などが、或る意味で堂々と行われています。
多くのEメールやホームページには一人一人の心の中が映し出されているのだとすれば、インターネットの全体的な印象は、いわば大きな鏡に映し出された人類の虚像でもあるわけです。
しかもこれからサーバーとクライアントの区別さえ付かなくなってきたら、いったいこの鏡の世界はどんな様相を呈することになるのでしょう。
一つ面白い話があります。
興味深い宇宙研究の一つにET(異星人)探索がありますが、近年、本格的な地球外知性体探査(SETI)プロジェクトが始まりました。
知的な異星人の見つけ方は、おそらく彼らも利用しているであろう電波を見つけるというのが有効な手段と考えられています。
ところが、四方八方から地球に到来する電波の種類は無数に多く、それらを解析するには超高性能のコンピューターと膨大な年月が必要となるのだそうです。
第一、それだけの設備と工数をまかなう予算などありません。
そこで、スタッフの方が知恵を絞られたのですね。
その結果、なんと、世界で最も高性能のスーパーコンピューターを殆どタダで使用する方法が編み出されました。
それは、インターネットを介して専用のスクリーンセーバーを世界中の人に無料配布し、そのプログラムに電波解析処理を行わせ、その結果をセンターにリポートするという方法です。
こうすれば、インターネットは世界最大の並列処理型コンピュータとなるわけです。
そして、この世界最大のスーパーコンピュータを制御するのは、一人一人の人間の意志ということになります。
さあ、もうすぐ21世紀、宇宙人は見つかるのでしょうか。
そして人類の鏡には、いったいどんな虚像が映し出されるのでしょうか。
ホームページ | URL |
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ナプスター | http://www.napster.com/ |
SETI@home | http://setiathome.ssl.berkeley.edu/ |
SETI@home日本語サイト | http://www.vacia.is.tohoku.ac.jp/~s-yamane/articles/setiathome/home_japanese.html |