春のギャルッチョ年度が明けました。 役職が上がり「おめでとう」を言いに来てくださる方もいます。 けれど手放しには喜べない。 責任は重くなったし、 益々もって自由な時間がなくなってきたからです。 週末も半分取られてしまったような感あり。 それでも無理矢理スケジュールを詰め込むものだから、 休まるときがなくなってきました。 例えばバンド活動。 旧友達とのバカバンドもさることながら、 新進気鋭の女性ボーカルのバックも努めさせてもらっています。 ブラジル人ドラムプレーヤーを父に持つハーフの女の子で、 歌は上手いしスタイルはいいし、背なんか僕より高い。 並んでプレイしては申し訳ないから端に座ってやろうかなどと考えている次第。 若いというのは素晴らしい。 夢に満ちていてワクワク感がある。 もし若いのにワクワクしていない方がいらしたら、 それもOKですけど、若いというだけでも素敵なことなんですよ。 貴方には時間がある、これはお金では買えないのですから。 若いといえば週末の少女サッカーチーム、続いています。 お母様方のご協力や、若いコーチのお陰で楽しくできています。 このコーチ、うちの会社のサッカー部長でもある。 隣の少年サッカーチームの子どもたちが彼の技を見て喜び、 「ベッカムだ!」、「ベッカム!」と追い回していた。 悔しいので僕は彼を「ベッカメ」と呼ぶことにしています。 かくいうベッカメ、高校時代は中田英寿擁する韮崎高と 合同練習をしていたという強者らしい。 もっとも中田選手だけは「別メニュー」だったらしいが、、、 いずれにせよちゃんとした手本を示せる貴重な存在。 いろんな人に支えられてものごとが実現する、 感謝しなくちゃいけませんね。 僕はよく少年サッカーのことを「ガキンチョサッカー」と呼ぶのだけれど、 このチームは「ギャルッチョサッカー」、まさしくそういう雰囲気です。 「女の子たち」などと呼ぶより「ギャルッチョども」 と呼んだ方が失礼ながらしっくりきます。 例えばベッカメなぞはおもちゃにされてる。 オシャレな毛糸のキャップは剥ぎ取られ、 返せと言ったら泥んこのボールに被せられて返ってきます。 まぁ、それだけ打ち解け合い、笑顔の絶えないチームではあります。 ギャルッチョどもは近隣二つの小学校から集っております。 昨年までの学年構成は2〜5年生。 だから今年は一人も卒団しないはずだったんだけれども、 年度末というのは移動のシーズンでもあるんですね、 5年生のギャルッチョが1人神戸に転校することになりました。 途中から参加した子で、最初は蹴ってもボールが飛びませんでした。 力が入ると膝が伸びたまま脚を振ることになり、 ボールは余計にヘナヘナと転がるだけ。 足は速いし守備センスもいいのでけっこう活躍はしてましたけれど、 あまりオフェンシブな役回りではありませんでした。 そんな彼女でしたが、この2月、 大きな6年生女子軍団相手の対外試合で凄いプレーを見せてくれました。 劣勢の中、とにかく一矢報いようと駆け上がった先、 右サイドから蹴り込まれたボールをそのままシュート。 テイクバックで膝が柔らかく曲がり、 そこから体を鞭のように使った一振り、 素早い振りだったのですが僕にはスローモーションのように見えた。 そのインステップがボールのど真ん中を捉えたものだから、 ボールは矢のようにゴールネットに突き刺さりました。 「やったーっ!」というより、「うぉ!・・・」、そんな印象。 美しかった。 本当に美しいものというのは、 歓びの戦慄とでもいいましょうか、 ぞっとするようなところがありますね。 後にも先にもこの1点が彼女のギャルッチョ対外試合唯一のゴールとなりました。 年度最後の練習もギャルッチョな空気の中でわいわいがやがや。 運動場に遊びに来たガキンチョ(男子)ども相手に練習試合。 兄妹が罵り合う場面などありイエローカードまで出る始末。 いつもながらの練習日ではありましたが クロージングミーティングで彼女の転校の話。 もちろん皆知っているので特に何事もない雰囲気。 彼女に最後の挨拶をしてもらい解散。 「じゃあね〜」、「またねぇ〜」と ギャルッチョどもが三々五々去っていく中、 僕は彼女を見つけ、握手を求めました。 思えば今はなき侮易徒夫がよくそうしたように、 別れ際の握手がしたくなったのです。 彼女は照れずにしっかりと握ってくれました。 その手は少し冷たかった。 これから、友達と離れ、地域と離れ、 この小さな子がいわば単身新たな世界へ自らを投じるわけです。 僕はなかなか手を離さなかった。 彼女も自分から離そうとはしなかった。 「北の国から」というTVドラマがありましたけれど、 最終回の「遺言」という作品の中で、 田中邦衛の「ゴロウさん」と宮沢りえの「シュウちゃん」が 風呂の内外で窓越しに手を握るシーンがあります。 あんな気分かもしれない。 離したくない、でも離さなくてはならない。 握手の後、彼女はギャルッチョらしからぬ 丁寧な言葉で礼を述べてくれました。 如何せん、行き交う他のギャルッチョどもの 「も帰ろ」、 「ちょっとまって〜」、 「デルピ(僕はそう呼ばれている)何してんの?」、 「ね、行こ」 などの五月蠅い声に遮られ、礼の言葉は半分聞き取れず、 彼女には片手を挙げて「おぅ」と応えたのがやっと。 彼女は、やはりギャルッチョらしからぬお辞儀などして帰っていった。 君とはもう二度と会うことがないかもしれない。 でも僕はあのゴールを忘れないよ。 楽しいが忙しい週末を更に苦しめているのが休日出勤と引越しの準備。 もうすぐ僕も引越しするのです。 息子の成長と共に16年間暮らしてきた言わば第二の故郷。 その故郷を後に、春、僕もまた旅立つわけです。 もっとも3kmほどしか離れてないとこですけど。。。 |
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